「文士村ってどんな場所?」を調べてきた!~田端文士村記念館調査レポートとイベント開催のお知らせ~

「田端文士村記念館」ってどんな場所?

田端駅北口を出て、横断歩道を渡ってすぐの場所。田端高台通りへと続く、ぐるりとカーブする大きな坂道、江戸坂。その坂の途中に「田端文士村記念館」と書かれた施設があります。田端在住の人なら、一度は目にしたことがある方も多いのでは?でも実際に足を踏み入れたことのある人って、もしかしたら意外と少ないのかもしれません。

「文士?村??」という言葉からは、どんな施設なのかピンとこないかも。わたしも始めはそうでした。

文士とは「文筆を生業とする人」の意味。実は田端は、あの有名な芥川龍之介が居を構えた場所として知られています。ほかにも彼を慕い、室生犀星や菊池寛など、多くの文士たちが、実際に住んでいたのだそう。現在の東京大学や東京芸術大学が近かったこと、また大学周辺よりも農地が多く、家賃が安かったこともあり、多くの文士や芸術家たちのゆかりの地となったのです。

田端文士村記念館では、そうした文士や芸術家たちの原稿・初版本・絵画・彫刻だけでなく、当時どのように交流していたかの記録などが展示されています。

どの時代に、どんな作品が発表されたかなどの年表も分かりやすく掲示されています。かつて教科書で見たことのある文士の名前がズラリ。こんなにも多くの文士たちが、ここ田端で過ごしていたのかと思うと、驚きます。

取材日当日は平日の昼間だというのに、様々な年代の人が訪れて資料をじっくり読み込んでいました

当時はスマホもパソコンも、電話でさえ一般的でない時代。文学について語り合うときなどに都合がいいようにと、芥川の家を中心に、仲間や後輩たちが田端に移り住んで街も大きく変わっていきました。文士たちは競って作品を発表し、名声を高めていったのだそう。

「いやいや、昔の作品なんて国語の教科書以来読んだことがないから、とっつきにくいよ!」

とまだ考えている、そこのあなた。そんな人におすすめの展示は、芥川が実際に田端で暮らしていたころの住居を、30分の1のサイズで復元させたジオラマです。

書斎にはヘビースモーカーだったといわれる芥川が実際に煙草をたしなんでいた長火鉢や、原稿が書かれた文机なども再現されています。生い茂る庭の木には、木登りをする芥川の人形も隠れていますよ。じっと眺めていると、まるで当時にタイムスリップしたかのよう。

そんな田端文士村記念館では、夏休みの時期に合わせて、2つのイベントが用意されています。

文学好きじゃなくても問題なし!文士村記念館イチオシのイベント2選

1. 特別展「河童忌記念帖2021 in田端~現代作家が選ぶ 芥川龍之介のことば~」

一つ目は「河童忌記念帖2021」。“河童忌”とは、芥川の命日に親族や友人たちが集って行われてきた会。故人を偲びながら参加者同士で俳句を詠んだりして過ごすのだそう。

展示の詳しい内容は、行ってからのお楽しみに……!

今回は著名な現代作家3名が、芥川の作品の中から印象に残っている一節を直筆で書き起こしたもののほか、なぜその一節を選んだかについて書かれたコメントが展示されています。

角田光代氏、北村薫氏、山崎ナオコーラ氏などといった有名な作家の方々が、どんなことばに深く感銘を受けたのか。芥川作品を読んだことがない方でも、現代の作家を切り口にすることで、また違った角度で彼を知ることができるかもしれません。

また本イベントと同じ時期に、芥川龍之介が描いた「河童図」をプリントしたマスクも販売されています。

内側には所蔵資料から厳選した、芥川の“ことば”が印刷されているというこだわりも!

このマスク製作に携わってくださったのは、田端新町にある「奈良光シルクスクリーン工房」さん。普段はバンドTシャツなどの製作を手掛けているそうですが、文士村記念館からの要望に快諾いただき、1枚1枚シルクスクリーンで印刷してくださったのだそう。まさに「メイドバイ田端」の、ここだけで手に入るオリジナルのマスクです。

2. 第2回子ども芥川龍之介検定

二つ目のイベントは、芥川龍之介にまつわるクイズに答えるとプレゼントがもらえる、「子ども芥川龍之介検定」です。

今年はオンラインでの開催となりますが、毎年とても好評なイベントの一つ。クイズには4択の回答が用意されていて、全部で20問あります。

80点以上の人には名前入りの認定証を贈呈。またアンケート回答者の中から抽選で、記念のクリアファイルもプレゼントされる予定です。(残念ながら認定証は小学3年生~中学3年生まで。回答だけであれば大人の方も参加できますよ!)

例えばこんな問題が出題される予定。皆さんは分かりますか?記念館に一度足を運んでいただければ、その回答が一部分かる仕掛けにもなっていますよ。

>>さっそくチャレンジしてみよう!<<
https://kitabunka.or.jp/tabata/news/6316/

最後に今回案内をしてくださった研究員の白石顕子さんに、文士村記念館への想いを聞いてみました。

「文学作品や芸術作品と聞くとどうしても、一部の人が興味を持たれるものだと考えてしまうかもしれません。けれどここでは、芥川をはじめ多くの作家たちが私たちと同じ、一人の人間として、田端でどのように暮らしていたのかなどを垣間見ることができます。彼らが世に出してきた作品が、当時ののどかで静かな街並みの田端で生まれたんだなぁと思うと、なんだか感慨深いんですよね。

文士村記念館の前にあるバス停でバスを待っている間に、買い物のついでに。無料なので入ってみて『面白くない』と思えば、出ていったっていいんです。まずは一度足を運んでいただいて、貴重な作品の数々や、歴史に想いを馳せてみる機会をもっていただけたらうれしいです」

取材の帰り道。「芥川龍之介の作品も有名なものしか知らないし、これを機に作品を読んでみようかな……」なんて思う自分がいたり。河童忌のイベントで紹介されていた、山崎ナオコーラさん著『文豪お墓まいり記』が気になってしまい、思わずネットでポチっと購入する自分がいたり……。どちらも文士村記念館に足を運ばなければ、得ることのなかったことばかりです。

自分の興味の範囲内で暮らしていくこともいいけれど、ふとしたきっかけで出会ったモノ・コトで、人生が少しだけ変わることがあるかもしれない。

展示の内容が難しく分からなかったとしても、何か一つだけ、ことばの一節でも持ち帰ることができたのなら。それだけで今日ここに来て良かった、と思えるはず。

これまで気になってはいたけれど、一度も足を運んだことがないという人へ。これも何かの縁です。ぜひ散歩がてら、ふらりと立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

田端文士村記念館

〒114-0014 東京都北区田端6-1-2(JR山手線・京浜東北線「田端駅」北口より徒歩2分
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は火・水曜日)、祝日の翌日(土・日曜の場合は翌火曜日)

https://kitabunka.or.jp/tabata/

◆1.特別展「河童忌記念帖2021 in田端~現代作家が選ぶ 芥川龍之介のことば~」

開催期間:2021.7/6(火)~9/19(日)※休館日を除く
内容:現代の小説家に、印象的な芥川作品を選んでもらい、理由を添えて展示するもの
出品作家:角田光代、北村薫、山崎ナオコーラ

https://kitabunka.or.jp/tabata/news/6344/

◆2.第2回子ども芥川龍之介検定(オンラインイベント)

開催期間:2021.7/10(土)10:00~8/31(火)17:00
対象:小学3年生~中学3年生

https://kitabunka.or.jp/tabata/news/6316/

文・櫻井朝子

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